第14回「ストーカーになりやすいお客さんの見抜き方」

小早川明子先生に聞く「ストーカー対策」後編

前編に引き続き、後編は、ストーカーになりやすいお客さんの見抜き方や、ストーカーについての理解を深めるお話です。

◆危険度のレベル ~どんな人がストーカーになるの?~

お客さんには、始めから危なそうな人とそうでない人がいますが、それを見抜くには、ストーカーについての知識が役に立ちます。
「僕とおつきあいしてください」、「20回指名したら僕とデートしてくれるよね」と、通常ではありえないことを言ってきたら、危険性を考えましょう。この人はもうストーカー予備軍だと見極める段階です。そしてここで縁を切るべきでしょう。当てはまるタイプとしては、モテない、気が弱い、遊んでない、執着心が強い、「僕特別なんだよね」という思い込みが強い、ロマンチックな妄想を抱いている、自分は偉大な人間だという勘違い、世の中に恨みを抱いている、自分は不幸と思いこんでいる、生きる事にひねくれている、という特徴があります。これはリスクの段階でなんとなくわかると思います。
ストーカーになりやすい体質や特徴として、以下のようなポイントを押さえておくことが重要です。

・人の批判や悪口が多い。
・機嫌がいい時と悪い時の差が激しく、二面性がある。
・最初からどんどんプレゼントくれようとする(一般的には、1万円以上のプレゼントは、好きな相手ではないのなら貰わないようにすること。気を持たせていい人かどうかが判断基準)。
・同情を引く話をよくする。
・1日3通以上メールを送信してくる。
・つきあってもないのに「写真を送って」という。
・一対多の関係でなく、一対一の関係に持ちこみたがる。
・店員らに対する態度が悪く、ほめないと機嫌が悪い。
・3日間メールを返信しないと怒る。
・とても真面目で責任感が強い。

◆危険度のレベル ~リスク・デインジャー・ポイズン~

ストーカーの危険度にはリスク・デインジャー・ポイズンの三段階があります。

リスクの段階は、相手とプライベートで会えるのではないか?と要求がでてきますが、しっかりと断る、断るときは「それは私は苦しいので」で十分です。いろいろと弁明する必要はありません。自宅や家族のこと、経歴など個人的情報は伝えないことです。こうした被害者の対応次第ではよい方向に向かいます。

デインジャーの段階は、切迫したメールが一日に何度も送られてきたり、待ち伏せ行為が行われたり、危険が雪だるま式にふくれあがり、警察の警告、カウンセラーや弁護士が間に入るなどの第三者による介入が必要になります。

そして、ポイズンへ進むと加害者の存在自体が毒。「呪ってやる」「殺してやる」「破滅させてやる」などといった脅迫的なメールを何十回も送り、住居侵入等、警察の力を必要とする状況になります。最悪の結果、殺人事件も起きかねないもっとも危険な状態になります。仕事を一旦お休みすることも含めて考えないといけないのです。

小早川先生は、リスクやデインジャーの人にカウンセラーとして会いに行き、ストーキングを止めるように説得しに行きますが、それでも聞く耳をもたない場合は警察の警告、ポイズンになった場合はストーカー規制法違反か脅迫罪で告訴して逮捕してもらうように指示するそうです。

◆加害者は3タイプ ~リスクからデインジャーにあがる人にも3タイプある~

1、自分がおかしいというのがわからない。70%
相手が嫌っていると言っているのに「自分のことを相手は本当は好きなはずだ」と考えたり、相手に振られたことで「自分は被害者、相手は悪人で加害者」だと思うなど、認識の仕方や考え方がゆがんでいるのでストーキングしてしまう人がいます。こういう人には、考えがおかしいことを教えてあげないといけません。 ただ、それは当事者が言っても聞き入れられることはまずありません。第三者が客観的に指摘することが必要。「相手はあなたのことを好きではありません」、「別れたいと言う相手を加害者だと考えるのは間違っている」という事実や常識、相手の感情を尊重することの大切さを理解させること(認知療法)が必要です。 相手には自分を嫌う自由も縁を切る自由もある、辛いけど、自分の感情は自分で処理しないといけないんだな、だから「自分のことを見捨てるな」とか言っちゃいけないんだな、ということに気付かせるのです。

確かに相手の人は「20回会いにきたらデートしてくれる」と言ったかもしれない。でも人は約束を守らない人もいる。その人を信じた自分にも責任があることにも目が行くこと、相手の約束違反を許せないなら脅迫したりストーキングしたりしないで、堂々と代理人を立てて異議申し立てしたり、訴訟を起こせばよいのです。 日本人は代理人(弁護士)を立てる権利があります。人は法律を越えて、怖がらせたり嫌がらせをしたりストーカー行為をしてはいけません。こうした世の中の仕組みをわからせるのも加害者に対する認知療法です。

2、わかっちゃいるけどやめられない。20%
風俗で働くみんなが高を括っちゃいけないのは、人間は理屈じゃない人がいるよ、ということです。今日の安全は明日はないかもしれない。

「自分はあの人がいないと生きていない」、「みんな自分が悪いと言う、自分は犯罪者になり捕まるかもしれない、けどコントロールができない」という理屈では自分を抑えきれないタイプもいるのです。 物事に対する嗜癖性が強い人に多い傾向です。例えば、ギャンブルにはまっているとか、アルコール、薬物依存のように、人間にも依存しやすく、はまる癖があります。 こういう人にもカウンセリングはしますが、できる限り、加害者家族に相談して病院での脳に働きかける行動療法をしてもらいます。

3、わかっているし、やめられるけど、やめない。10%未満
人間の命も魚の命も何が違うのかわからないという人がいます。人の苦しむ顔をみても平気で、良心が育たないタイプの人です。出生時のストレスなど関係があると言われています。 このタイプは、とにかく逃げる、脅迫が始まったら、できる限り早期に警察が身柄の確保に努めることが必要です。

◆もしストーカー被害に遭ったら

メールで脅しながら何度も外で会って欲しいと言って来る人には、お店のスタッフに事情を説明して付き添ってもらうか、腹を割って話ができる、あるいは仕事のことを話せて自分の身を心配してくれる友達にお願いして、一緒に相手に会ってもらいましょう。

約束をしてしまったら「申し訳ない」と謝りもう会わないことを伝えること。ストーカーの執着は、本人の内面の問題が多いので、加害者への認知療法をしてもらえるようにカウンセラーの介入を専門家にお願いすることも大事なことです。 一人で抱えてどうしたらいいかわからない場合は、SWASHや、小早川先生のNPOヒューマニティに相談してみてください。

小早川明子先生のプロフィール
ストーカー問題をはじめDVなど、あらゆるハラスメント相談に対処するNPO法人「ヒューマニティ」理事長。1999年に活動を始めて以来、500人以上のストーキング加害者と向き合い、カウンセリングなどを行なっている。
NPOヒューマニティ
▽小早川先生の最新著書「ストーカー – 「普通の人」がなぜ豹変するのか」(中公新書ラクレ・2017年)