第20回「ギャラの未払い問題」

お店からギャラが支払われなかったときの対処法

お店からギャラが支払われなかったときの対処法を聞いてみました。おこたえ頂いたのは、働く女性の全国センターの伊藤みどりさんです。

Q.一般的に、働く人の権利が侵害されたりすると、労働基準監督署に相談するという方法があるそうですが、 労働基準監督署に行って、お店のギャラの未払いのことを相談するとしたら、本名は言わなくちゃいけないですか? 警察とつながっている機関ですか?

A.匿名でも良いですが、匿名だと、なかなか動いてくれません。なぜなら相談が多すぎて後回しにされます。また、労働基準監督署は、明確な労働基準法違反しか受理しません。例えば、解雇問題は、労働基準監督署では雇用主が労働者に1か月前に解雇を予告するか、平均賃金の1ヶ月分の予告手当を支払っている場合しか問題を扱いません。
解雇理由をめぐって合理性があるかどうかを争うときは、労働基準監督署に相談しても受理されません。個別紛争処理機関である労働局の相談窓口に回されます。
労働基準監督署を使うときは、労働基準法違反という証拠を揃えて整理して相談に行ったほうが良いと思います。労働基準監督官が動くときは、証拠が明確なときで、受理して事件番号が付けられた時に初めて動きます。相談窓口の人は、監督官ではないので、相談して即、受理されたことにならないので注意しましょう。
証拠は、例えばお店の所在地を証明する書類、未払い賃金のある場合なら、タイムカードや出勤時間のメモ、給与明細(なければ、ギャラに関するお店の人とのメールのやりとりや、同僚の持っている証拠など)、お店に支払いを要求したが支払ってもらえなかったとする内容証明の未払い賃金請求書などです。
また、労働基準監督署の署は、警察署の署です。逮捕権を持っていますので、警察とつながっています。

Q.未払いのギャラが戻ってくるまで、金銭的に苦しいのですが…。

A.お店がつぶれた時に、使えそうなのが、「賃金の支払い確保などに関する法律」に基づく未払い賃金の立替払制度があります。独立行政法人・労働健康福祉機構が行っています。
「オーナーが破産した」、「オーナーが経済的に支払い能力がない」などの理由によって、ギャラが支払われないことが確定的な場合で、なおかつ、これまでの未払い分を証明することができれば、相談してみるのがいいでしょう。

独立行政法人・労働健康福祉機構
未払賃金の立替払事業
以下、同サイトより抜粋

未払賃金の立替払制度は、労働者とその家族の生活の安定を図る国のセーフティーネットとして、企業倒産に伴い賃金が支払われないまま退職した労働者に対し、 『賃金の支払の確保等に関する法律』に基づいて、その未払賃金の一定額(退職日の6月前の日から立替払の請求日の前日までに支払期日が到来している「定期賃金」及び「退職手当」のうち未払賃金総額又は限度額のいずれか 低い額の8割相当分)を、政府が事業主に代わって立替払する制度で、当機構が本事業を実施しています。
立替払を行ったときは、その立替払金に相当する額について、当機構は労働者の承諾を得て賃金請求権を代位取得し、事業主等に求償することとなります。
未払賃金の立替払に関するご相談やお問合せについては、最寄の労働基準監督署又は労働者健康福祉機構でお受けしております。

◎ 労働者健康福祉機構 産業保健・賃金援護部 審査課 立替払相談コーナー
電話相談窓口 : 044-556-9881
相談受付時間 : 月~金 9時15分~17時(土曜、日曜、祝日休み)
(電子メール、ファックス、郵便による相談はお受けしていません)
神奈川県川崎市幸区堀川町580番地 ソリッドスクエアビル東館 17階

なお、個人の具体的な立替払請求に関するお問合せは、原則として御本人からのみに限らせていただいております。 また、相談内容により、生年月日、電話番号などの本人確認をお願いする場合があります。

[未払賃金の立替払制度の概要]