「第6次男⼥共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え⽅(素案)」についての意見提出(パブリックコメント)協力のお願い

2025年8月26日に、内閣府男女共同参画局より「第6次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方(素案)」が発表されましたが、第6分野(ジェンダーに基づくあらゆる暴力を容認しない社会基盤の形成と被害者支援の充実)の「8 売買春への対策の推進」という項目について、私たちは問題点があると考えています。

目次

「性を商品化し、人間の尊厳を傷つける売買春の根絶に向けて」という表現について

すべての「売春」を単純に「人間の尊厳を傷つける」ものとみなすことは特定の職業に対する偏見と差別に繋がります。また、スウェーデンやフランスなど、「売買春」の「根絶」「廃止」を目指す法的な取り組みを実施した国がいくつかありますが、セックスワーク/セックスワーカーの根絶に繋がっていません。※1「人権擁護」を目指し「売買春」を犯罪化した国では、むしろ暴力被害や生活の悪化に繋がるという調査結果が出ています。※2

さらに、HIVを含む性感染症予防においても、処罰化、犯罪化が予防や治療へのアクセスを妨げる要因になることが指摘されています。※3

「(2)具体的な取組」の①の「『売買春の被害に遭うおそれのある女性』の支援」について

売買春対策の具体的な取り組みとして(2)の①で「売買春の被害に遭うおそれのある女性」の支援について言及されています。しかし、「売買春」自体を「被害」とみなすような表現が見受けられ、支援対象は「売春」を辞めた女性、もしくは未然に防止された女性となっており、福祉やアウトリーチ支援に依らずに「売春」を選択した者については一切言及がありません。このような支援は、「売春」を行う女性を分断し、「被害者」とみなされない場合、必要なときに医療や法律などの支援にアクセスしにくくなる危険性があります。

「(2)具体的な取組」の③の「売春の相手方の行為」について

具体的な取組の③では「売春の相手方の行為」について言及されています。「売春防止法(昭和 31年法律第118号)の更なる見直し」とは「買春処罰法」(通称:北欧モデル)の導入であることが想定できます。すでに買春処罰法を施行した国では、暴力被害増加や生活の悪化に繋がるという調査結果が出ており、欧州人権裁判所でも「買春処罰法がセックスワーカーの生活に悪影響を与えた」と認められました。※4
もちろん現在のセックスワークの環境が安全性や健康にとって十全ではないこと、改善が必須であることは私たちも把握していますし、「売春」をしたくない人が従事しなくて済む施策が望ましいと考えています。しかしながら、社会保障がじゅうぶんでない現状を鑑みると、「売春」を選んだ人も安全と健康にアクセスが出来、辞めたい時にも安全に健康に辞めることが出来るような施策も必要です。

したがって、あらゆる人を支援するための施策は従事者のリスクを増加させるものであってはなりません。

回答期限:令和7年9月15日(月)23:59まで

あらゆる人を支援する政策にはエビデンスが重要です。私たちはそのエビデンスを提供することができます。しかし、売春防止法、女性支援法など、セックスワーカーに関する法律や政策をつくる際、当事者の声はほとんど聞かれてきませんでした。 悪影響を及ぼしている他国の政策をなぞらず、「売春」を選択した人も健康や安全が脅かされないための政策が必要です。私たちは、多様な当事者の声に基づいた政策を要求します。
どうか多くの市民の皆さまからも下記「意見提出のフォーム」からこの素案への懸念の声をお届けください。

パブリックコメントをご提出いただく際、以下のポイントをご参考ください

・「売春」を単純に「人間の尊厳を傷つける」ものとみなすことは特定の職業に対する偏見と差別に繋がります。

・支援対象を「売春」を辞めた女性、もしくは未然に防止された女性と限定することで、「売春」をする人たちを分断し、「売春」を選択した人たちの医療や法的サービスへのアクセスを困難にするおそれがあります。

・買春者の処罰を含む性産業に対する取締りの強化は、セックスワーカーの安全や健康に悪影響を及ぼす可能性があります。具体例として、性感染症の予防や治療へのアクセスの困難化、業界のアンダーグラウンド化による搾取や暴力の助長などが挙げられます。

・本素案の起草に多くのセックスワーカー当事者が関わっていません。さまざまな状況に置かれる当事者や、長年活動を行ってきた支援者へのヒアリング調査を行う必要があります。


また、性産業に関する法規制の強化がもたらす危険性や関連分野について研究成果を発表されている方は、ぜひその成果もご共有ください。エビデンスが多いほど、本素案を改善できる可能性が高まります。その他、ご質問がある場合はこちらのコンタクトフォームからご連絡ください。

※1 Hélène Le Bail, Calogero Giametta, Noémie Rassouw. What do sex workers think about the French Prostitution Act?. [Research Report] Médecins du Monde. 2019 

※2 アムネスティインターナショナル【Q&A】セックスワーカーの人権を擁護する方針に関して 2016/5/26

※3 UNAIDS HIV AND  SEX WORK HUMAN RIGHTS FACT SHEET SERIES 2024

※4 M.A. and Others v. France – HUDOC ヨーロッパ人権裁判所

UNAIDS作成「HIV &Sex Work」テキスト部分翻訳

1p左上から

2023年、世界の性労働者におけるHIVの中央値有病率は3%(範囲0〜62%、報告国72ヶ国)でした(1)。2022年における全HIV感染者のうち、性労働者が占める割合はおよそ8%でした(2)。

構造的および社会的障壁の交差、偏見や差別、そして厳罰的な法律、政策、慣行が、重大な格差を生み出し、性労働者が自らの健康、安全、充足感のある生活を守ることを妨げています。

性労働者には、18歳以上の女性、男性、トランスジェンダーおよび多様な性別の人々が含まれ、性的サービスの対価としてお金や物品を定期的または不定期に受け取ります。性労働は、形式化または組織化の度合いによって異なる場合があります。性労働は成人同士の合意に基づくものであり、多様な形態があり、国や地域、コミュニティによって異なることに留意することが重要です。

国は、HIVと性労働に対して、格差を減少させ、人権と公衆衛生を保護・促進するエビデンスに基づく対応を実施すべきです。上記の対応には、HIV関連機関へのアクセスの確保、支援的で参加しやすい環境の整備、性労働者主導の団体との完全なパートナーシップのもとでの構造的障壁の除去が含まれます(3-5)。

重要な取り組みには、買春、売春、管理を含むすべての側面の刑事罰化の廃止(非犯罪化)、労働者保護の拡大、国家および民間による暴力からの性労働者の保護、コミュニティのエンパワーメント、そしてスティグマや差別の根絶が含まれます。

2p
データ

2023年のデータによると、世界の性労働者におけるHIVの中央値有病率は3.0%(0~62%にわたり、報告国は72カ国)でした。これは、15~49歳の総人口において推定される世界的有病率0.7%よりも高い値です。データがある4カ国では、トランスジェンダーおよび多様なジェンダーの性労働者におけるHIV有病率は著しく高く、報告された中央値は18%でした(1)。

2024年7月時点で、少なくとも169カ国がセックスワークの一部またはあらゆる形態を犯罪化しています(6)。

2023年には、69カ国の報告に基づく中央値で、80%の性労働者が、過去12カ月以内にHIV検査を受けて結果を受け取ったか、もしくは以前にHIV陽性と判定されたことがありました(1)。

HIVとともに生きるセックスワーカーの抗レトロウイルス療法の普及率は低く、2023年の世界中央値は66%(報告国32カ国)です。若年の性労働者では高齢の性労働者と比べて普及率が低く、HIVとともに生きる25歳未満のセックスワーカーの中央値は55%が治療を受けているのに対し、25歳以上のセックスワーカーは72%でした(報告国7カ国)(1)。

顧客との直近の性行為におけるコンドームの使用率は、一部の地域で依然として懸念されるほど低いままです。最近報告された5カ国(コンゴ民主共和国、ホンジュラス、シエラレオネ、南スーダン、ザンビア)では、顧客との直近の性行為においてコンドームを使用したと報告した性労働者は50%未満でした(1)。

性労働者におけるHIV予防対策の組み合わせの普及率と利用率は、世界的に低い状況にあります。直近の報告によると、過去3カ月以内に少なくとも2種類の予防サービスを受けた人の中央値はわずか50%にとどまっています(報告国32カ国)(1)。過去12カ月間に暴力を経験したと報告した性的労働者の中央値は21%です(31の報告国)(1)。人種差別、トランスフォビア、経済的不安定、移民の在留資格、人道危機といった社会構造的要因が複雑に重なり合うことで、さまざまなグループの性労働者が暴力にさらされやすくなっています(7, 8)。

2025年 グローバルエイズ社会的促進目標

性労働に関するいかなる側面も犯罪化する法律を有する国を10%未満にする。
スティグマや差別を経験すると報告する性労働者は10%未満であること。

性労働者に対して否定的な態度を示すと報告する医療従事者や法執行官は10%未満に。
セックスワーカーが虐待や差別を報告し、救済を求めるためのメカニズムが欠如している国は10%未満であること。
法律サービスへのアクセスがないセックスワーカーは10%未満に。

身体的または性的暴力を経験するセックスワーカーは10%未満に。

3p
権利と健康成果の結びつき

性労働の犯罪化は、性労働者がHIVに感染するリスクを高め、顧客や警察、その他の人々からの暴力にさらされる脆弱性を増加させます。
性産業の顧客を犯罪化することも、性労働者の安全性と健康に悪影響を与えることが繰り返し示されており、コンドームへのアクセスと使用を減少させ、暴力の発生率を増加させることが繰り返し示されています(9-13)。性労働のいかなる形態の犯罪化も同様に、公衆衛生、暴力、そして福祉へのネガティブな影響をもたらします。

犯罪化は、効果的なHIV予防、治療、ケアおよび支援サービスを含む医療サービスへのアクセスを妨げることが証明されています(5, 10, 11, 14)。サブサハラアフリカの10カ国で2011年から2018年に実施された研究のデータの分析では、性産業を犯罪化している国における性労働者のHIV感染の可能性は、性産業を部分的に合法化している国に比べて7.17倍高いことがわかりました(12)。

2015年に発表された研究によると、性労働の非犯罪化は、10年間にわたり性労働者と顧客の間で33~46%のHIV感染を防ぐことが可能であるとされています(11)。
性労働を正当な仕事として認めないことは、性労働者から他の労働者に提供される基本的な健康や社会的セーフティーネットを奪うことになり、特に経済的な不況時には有害です(15)。したがって、性労働の犯罪化は、生命、住居、安全、プライバシー、医療サービスへのアクセスなどの他の権利侵害にもつながります(16, 17)。

4p
国際的な権利、義務、基準および推奨事項

すべての人は、自己の自由および安全を享受する権利、エピデミックの文脈における治療や予防を含む、達成可能な最高水準の健康を享受する権利、安全な労働条件の権利、そして差別を受けることなく自己の身体や性的指向に関する自律性を有する権利を持っています(18–20)。

国際的な人権機関や専門家、国連機関は、国家が性労働者に対する直接的および間接的な犯罪化をやめるべきだと明確に示しています。この犯罪化には、性労働者やその顧客に対して用いられる行政上の罰則やその他の措置、登録を怠った性労働者に罰則を科すライセンス制度も含まれます。

国家は「更生施設」での性労働者の拘束を直ちにやめるべきです (9, 31)

女子差別撤廃委員会(CEDAW委員会)は、性労働者に対する強制的な健康検査の実施は人権侵害であり、HIV検査を含め、やめなければならないと述べました(32)。むしろ、各国は性労働者主導のアウトリーチを通じて提供される、アクセス可能で、受け入れられやすく、利用可能かつ良質な自発的統合HIVサービスの提供を確保しなければなりません(3, 33)。

各国には、平等および差別禁止の原則に沿って、HIVおよび性と生殖に関する健康サービスへのアクセスを保障する義務があります。これには、性労働者向けの特化した予防サービスを通じたHIV関連機関へのアクセス向上も含まれます(3, 14, 34–38)。さらに、CEDAW委員会は、性労働者の健康と人権に特別な注意が払われるべきだと呼びかけています。(39)。

国家は、法を含む行動を起こし、性労働者に対する偏見や差別を排除しなければなりません(23、31、40、41)。

性労働者には、安全な労働条件と労働保護の権利があり、そこにはすべての移民性労働者も含まれます(8、41-44)。性労働者は、社会保障と財政支援制度に包摂されなければなりません(45)。

各国は、国家または民間によって行われる性労働者に対するすべての暴力行為を防止、調査、起訴、処罰するために必要な立法、行政、社会、経済その他の措置を採用し、サバイバーへの賠償を確保しなければなりません(23, 44)。法執行官は、性労働者に対する義務と暴力から彼ら・彼女らを保護する方法についてトレーニングを受ける必要があります(36)。

各国は、立法において性労働と人身取引を混同しないよう注意する必要があります。混同すると、性労働者や人身取引のサバイバーが権利を享受することを妨げる不適切な対応が実施されたり、暴力や抑圧につながる可能性があります(44)。
各国は、性労働者および性労働者主導の団体が、その多様性を尊重した上で、すべての法的、政策的、プログラム実施活動において意義のある関与・参加を可能にするべきです。性労働者の能力構築を支援するための財政的および技術的資源の提供も行う必要があります(23, 33)。

オリジナル(英語)および参考資料:https://www.unaids.org/en/resources/documents/2024/05-hiv-human-rights-factsheet-sex-work

日本の現状と要求

現在、日本では、成人間の合意のもとで行われた性サービス利用者を逮捕することはありません。しかし、買春処罰法が導入国の性労働者に与えた悪影響は既に日本でも類似点がいくつか見受けられます。まず、収入減少によって性労働者の経済状態が悪化し、その弱みに付け込んだハイリスク行為を顧客から要求されることが増加しました。
コロナ禍に政策やメディアによって歓楽街は「夜の街」と呼ばれ、まるで感染の温床であるかのようなイメージを植えつけられました。その結果、客足が減少しました。顧客の中には「感染の危険を冒して利用してあげているのだから」とリスクの高い行為を要求する人が増えました。また、経営が悪化したお店が性労働者に対してコンドームを着けない膣ペニス挿入行為を勧めることも増えました。経済的な困窮と社会的な偏見は、性労働者が主体的にリスクを避けることを困難にし、脆弱な立場に追いやってしまいます。
2023年度の調査では、性産業の新規参入者は性感染症の受検率が低く、正しい情報が届いていない可能性が浮き彫りになりました。
売買春が非犯罪化された国では、働き始める前に安全と健康を守るためのガイダンスがあります。これはお店を経営する人たちに従業員(セックスワーカー)の労働者としての権利を伝えるために行われます。
「売春」そのものが公衆衛生に害を与えるのではなく、「売春者」に対する偏見や法のあり方(処罰化、正当な労働として認めない)こそが公衆衛生に悪影響を及ぼしています。性感染症の検査受検と治療へのアクセスをしやすくするために、性労働に従事していることを伝えても逮捕の心配がない、否定されない、当事者の実態に即したアドバイスが受けられることが大切です。
そのためにも、男女共同参画を含む政策の決定や実施においては、性労働者主導の団体と公的機関や研究者が協働し、取り組みの計画・実施・経過観測を性労働者がリードできる仕組みづくりと、必要な予算の確保を望みます。

「わたしたち抜きでわたしたちの事を決めないで」

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